「ブラッド・ダイヤモンド」を観る
2007年 03月 13日
先のアカデミー主演男優賞で、レオナルド・ディカプリアがWノミネートされたもう一つの作品(「ディパーデット」よりこっちの方は高評価らしい)「ブラッド・ダイヤモンド」を観てきました。
いつもは試写の為に‘都落ち’はしないのですが、出来て間もない昨今流行の複合商業施設に併設されたシネコンでの試写となると、行かない訳には行きません~!
しかも主演はあのレオ様よ!
期待通りのシアター設備(映像綺麗!)に2時間23分の長尺も、おしりが痛くなることもなく観賞できました。
(本当に長いので椅子のよいシアターでないと厳しいかも・・・です。)
この作品、レオ様と共演の黒人俳優のジャオモン・フンスーも同じくアカデミーの助演男優ノミネートだったんですよね。納得の緊迫感溢れた、凄ましい体当たりの演技で、獲得しても良かったんでは?と思うほどでした。
この作品で舞台となった、アフリカの小国・シエラレオネはポルトガル語の「ライオンの山」をスペイン語に訳した意味の国名だそうです。
歴史をさかのぼると、ポルトガル・イギリス・フランス、と様々な欧州諸国が関与し、植民地などにされ結果、政治や経済はズタズダだった様です。
話は、採掘したてのダイヤモンド原石を巡る不正流通、アフリカ内紛戦争といった、重たい社会派作品。「ホテルルワンダ」のように同じアフリカ人同士の惨殺、「ナイロビの蜂」のような欧米に振り回されるアフリカ人の生き様が描かれ、目を覆うようなシーンの連続に食傷気味になりました。しかしながら、これは実際に起こった事柄の様で、克明過ぎてクレームがついたとかつかないとか。過去になりつつある現実を把握して損はありません。
(↓ここから少しネタバレ)
ソロモン・バンディー(ジャイモン)は貧しいながらも家族を愛す真面目な漁師。
賢い息子(ディア)を将来医者にしようと思っている。家族は他に妻、ディアの下に娘2人。
祖国シエラレオネは、内紛が耐えず、とうとう反政府活動をしている「統一革命戦線」(RUF)が村に。ライフル打ち鳴らし、女子供を殺し、政府への投票が出来ない様に男達の右手をナタで切り落とそうとする。それは正に地獄絵図であった。
頑強な身体のバンディーは捕らえられ、腕斬りを寸でのところで逃れダイヤモンド採掘の過酷な労働の捕虜に。それは助かったのではなく、新たな地獄への道だった。
ダイヤモンド密売人のダニー・アーチャー(ディカプリオ)は元傭兵。子供の時に両親を惨殺され、身も心も腐った人間になっている。仕事の為なら暴力もいとわず、今は部下としてかしずいている大佐の事も、いつしか裏切って大金を手に入れたいと思っている。
やり手の女記者マディー・ボーエン(ジェニファー・コネリー)はシエラレオネの荒廃はダイヤモンドの密売が絡んでいるに違いないと睨んでいる。が、確実な証拠がない。女だてらに危険な場所への潜入を試み続ける命知らずでもある。
村にRUFが襲ってくる様はまるでハンティング・ゲームの様に躊躇も容赦も全くない。
人質を物色しつつ殺すのではなく、見かけたら、前に進み出たら邪魔なら、人なら、なんでも撃つ。で、‘丸太切り’の様にナタを振り下ろす。
人間は狩場のウサギやキツネではない。ましてや丸太や、ダーツの的でもない。
でも、この作品ではあらゆるシーンで何度も何度もそうした殺戮が続きます。
(作品の半分はそうだ、といっても過言ではありません。RやPGはついていないのか?と思うほどの映像です。)
それでも映画ですから、「身体をはった」とか「地を這い回る」とかいってもねぇ、撮影合間には豪華なトレーラーで休憩なのでは?と思うなかれ。
スッゴイとこでスッゴイ状態撮ってるんですよ。衣装も怪我も“マジ”でボロボロどろどろの傷だらけ。そりゃ怪我もしますよね、レオ様。
バンディーは過酷な採掘の最中、素晴らしく大きなピンクダイヤモンドの原石を見つける。素人にもわかるその価値。バンディーは命を懸けてその原石をとあるところに隠す。離れ離れになった家族を探す切り札にする為に。その話を耳にしたアーチャーは横取りしようと計画。その為に取材のネタを欲しがるマディーを利用しようと考える。
アーチャーが登場して、柄の悪そうな連中と商売の交渉をするシーン、始めは“吹き替え”かと思うほどの“なまり”でした。なんでも北アフリカ出身の白人特有のアクセントとかで、「ディパーデット」の時にも生まれ育ちを表わすためになまりをそうとう学んだレオ様、この作品にも並々ならぬ入れ込みようです。
アーチャーが隠したダイヤの代償にRUFは息子ディア(カギソ・クイパーズ)を掴まえ、恐怖とクスリで彼を少年兵士にし、殺人を繰り返させる。
素朴でやんちゃなディアが、恐怖と混乱の中むりやり銃殺刑の引き金を引かされ、殺人を体験させられたショックに打ちのめされ堕落して別人になっていく様を演じたのは、なんとこの作品がデビューのカギソ・クイパーズ君。ダンスと演技を習っている最中とか。今回は惨い役でしたが、可愛いらしい役でも今度は拝見したい俳優さんです。
アーチャーは元傭兵ですから、人を殺すことも駆け引きも騙しも大得意。しかしながらダイヤモンドと駆け引きにバンディーのばらばらになった家族を探すには、社会的に信用が必要。それを持たない彼は公的信用があるマディーに自分の持っているダイヤモンドの裏取引の真相をちらつかせ、協力させる。
コネリーのマンディーはこの作品でたった独りの女性といってよいでしょう。
ですが、色気や何かで花を添えるのではなく、きちんとジャーナリストの信念を表現、芯の強い女性を好演です。
お互い損得だけの打算的な三人が(まぁバンディーは邪まではナイですが)段々に何かを見つけていく。
アーチャーが徐々に変わり、何か吹っ切れたようにすべてを捨て、家族思いのバンディーに肩入れしだす様子は流石にノミネート俳優!ちょっと泣けます。
ちょっとほっとするシーンもないわけではないですが、とにかく段々に「たかが半透明の卵くらいの石一個になんナンだ!命のほうが重い!」と怒りさえ感じる程、殺し合いの戦いの映画です。
その我々の心を見透かすように、アーチャーが「給料の三か月分も出して、ほいほい指輪を買う連中がいるからこうなのさ」的なセリフを吐きます。
既婚女性なら持っている人が多い、小さいけど幸せの思い出いっぱいのダイヤの指輪。
「この小さな石はドコから来たの?正当な健全な労働で世に出て、こうして私の指で輝いているの?」・・・・心の中でちょっと叫びました。
無意味な殺戮の中、有意義とは決して言いがたいですが、意義のある‘仕返し’をする父・バンディー。彼の怒りと悲しみに満ちた顔のアップは目に焼きついて脳裏から離れません。
映画館で観てこそ、な作品と感じました。
「ブラッド・ダイヤモンド」@映画生活
いつもは試写の為に‘都落ち’はしないのですが、出来て間もない昨今流行の複合商業施設に併設されたシネコンでの試写となると、行かない訳には行きません~!
しかも主演はあのレオ様よ!
期待通りのシアター設備(映像綺麗!)に2時間23分の長尺も、おしりが痛くなることもなく観賞できました。
(本当に長いので椅子のよいシアターでないと厳しいかも・・・です。)
この作品、レオ様と共演の黒人俳優のジャオモン・フンスーも同じくアカデミーの助演男優ノミネートだったんですよね。納得の緊迫感溢れた、凄ましい体当たりの演技で、獲得しても良かったんでは?と思うほどでした。
この作品で舞台となった、アフリカの小国・シエラレオネはポルトガル語の「ライオンの山」をスペイン語に訳した意味の国名だそうです。
歴史をさかのぼると、ポルトガル・イギリス・フランス、と様々な欧州諸国が関与し、植民地などにされ結果、政治や経済はズタズダだった様です。
話は、採掘したてのダイヤモンド原石を巡る不正流通、アフリカ内紛戦争といった、重たい社会派作品。「ホテルルワンダ」のように同じアフリカ人同士の惨殺、「ナイロビの蜂」のような欧米に振り回されるアフリカ人の生き様が描かれ、目を覆うようなシーンの連続に食傷気味になりました。しかしながら、これは実際に起こった事柄の様で、克明過ぎてクレームがついたとかつかないとか。過去になりつつある現実を把握して損はありません。
(↓ここから少しネタバレ)
ソロモン・バンディー(ジャイモン)は貧しいながらも家族を愛す真面目な漁師。
賢い息子(ディア)を将来医者にしようと思っている。家族は他に妻、ディアの下に娘2人。
祖国シエラレオネは、内紛が耐えず、とうとう反政府活動をしている「統一革命戦線」(RUF)が村に。ライフル打ち鳴らし、女子供を殺し、政府への投票が出来ない様に男達の右手をナタで切り落とそうとする。それは正に地獄絵図であった。
頑強な身体のバンディーは捕らえられ、腕斬りを寸でのところで逃れダイヤモンド採掘の過酷な労働の捕虜に。それは助かったのではなく、新たな地獄への道だった。
ダイヤモンド密売人のダニー・アーチャー(ディカプリオ)は元傭兵。子供の時に両親を惨殺され、身も心も腐った人間になっている。仕事の為なら暴力もいとわず、今は部下としてかしずいている大佐の事も、いつしか裏切って大金を手に入れたいと思っている。
やり手の女記者マディー・ボーエン(ジェニファー・コネリー)はシエラレオネの荒廃はダイヤモンドの密売が絡んでいるに違いないと睨んでいる。が、確実な証拠がない。女だてらに危険な場所への潜入を試み続ける命知らずでもある。
村にRUFが襲ってくる様はまるでハンティング・ゲームの様に躊躇も容赦も全くない。
人質を物色しつつ殺すのではなく、見かけたら、前に進み出たら邪魔なら、人なら、なんでも撃つ。で、‘丸太切り’の様にナタを振り下ろす。
人間は狩場のウサギやキツネではない。ましてや丸太や、ダーツの的でもない。
でも、この作品ではあらゆるシーンで何度も何度もそうした殺戮が続きます。
(作品の半分はそうだ、といっても過言ではありません。RやPGはついていないのか?と思うほどの映像です。)
それでも映画ですから、「身体をはった」とか「地を這い回る」とかいってもねぇ、撮影合間には豪華なトレーラーで休憩なのでは?と思うなかれ。
スッゴイとこでスッゴイ状態撮ってるんですよ。衣装も怪我も“マジ”でボロボロどろどろの傷だらけ。そりゃ怪我もしますよね、レオ様。
バンディーは過酷な採掘の最中、素晴らしく大きなピンクダイヤモンドの原石を見つける。素人にもわかるその価値。バンディーは命を懸けてその原石をとあるところに隠す。離れ離れになった家族を探す切り札にする為に。その話を耳にしたアーチャーは横取りしようと計画。その為に取材のネタを欲しがるマディーを利用しようと考える。
アーチャーが登場して、柄の悪そうな連中と商売の交渉をするシーン、始めは“吹き替え”かと思うほどの“なまり”でした。なんでも北アフリカ出身の白人特有のアクセントとかで、「ディパーデット」の時にも生まれ育ちを表わすためになまりをそうとう学んだレオ様、この作品にも並々ならぬ入れ込みようです。
アーチャーが隠したダイヤの代償にRUFは息子ディア(カギソ・クイパーズ)を掴まえ、恐怖とクスリで彼を少年兵士にし、殺人を繰り返させる。
素朴でやんちゃなディアが、恐怖と混乱の中むりやり銃殺刑の引き金を引かされ、殺人を体験させられたショックに打ちのめされ堕落して別人になっていく様を演じたのは、なんとこの作品がデビューのカギソ・クイパーズ君。ダンスと演技を習っている最中とか。今回は惨い役でしたが、可愛いらしい役でも今度は拝見したい俳優さんです。
アーチャーは元傭兵ですから、人を殺すことも駆け引きも騙しも大得意。しかしながらダイヤモンドと駆け引きにバンディーのばらばらになった家族を探すには、社会的に信用が必要。それを持たない彼は公的信用があるマディーに自分の持っているダイヤモンドの裏取引の真相をちらつかせ、協力させる。
コネリーのマンディーはこの作品でたった独りの女性といってよいでしょう。
ですが、色気や何かで花を添えるのではなく、きちんとジャーナリストの信念を表現、芯の強い女性を好演です。
お互い損得だけの打算的な三人が(まぁバンディーは邪まではナイですが)段々に何かを見つけていく。
アーチャーが徐々に変わり、何か吹っ切れたようにすべてを捨て、家族思いのバンディーに肩入れしだす様子は流石にノミネート俳優!ちょっと泣けます。
ちょっとほっとするシーンもないわけではないですが、とにかく段々に「たかが半透明の卵くらいの石一個になんナンだ!命のほうが重い!」と怒りさえ感じる程、殺し合いの戦いの映画です。
その我々の心を見透かすように、アーチャーが「給料の三か月分も出して、ほいほい指輪を買う連中がいるからこうなのさ」的なセリフを吐きます。
既婚女性なら持っている人が多い、小さいけど幸せの思い出いっぱいのダイヤの指輪。
「この小さな石はドコから来たの?正当な健全な労働で世に出て、こうして私の指で輝いているの?」・・・・心の中でちょっと叫びました。
無意味な殺戮の中、有意義とは決して言いがたいですが、意義のある‘仕返し’をする父・バンディー。彼の怒りと悲しみに満ちた顔のアップは目に焼きついて脳裏から離れません。
映画館で観てこそ、な作品と感じました。
「ブラッド・ダイヤモンド」@映画生活
by bijomaru0330am | 2007-03-13 23:45 | 試写会