「雪に願うこと」を観る
2006年 05月 11日
第18回東京国際映画祭グランプリ・監督賞・最優秀男優賞・観客賞を受賞の今作品。
“東京”と冠についてはいますけど、賞金は10万ドル(円じゃないのね)。
監督さん、換金の時期計った方がいいですよね(笑)
・・・と、ちょっと色眼鏡な書き出しでしたが、正直受賞しなかったら作品名も知らなかったことでしょう。
役者は粒ぞろいの演技派+舞台は雪の北海道=ヒューマンドラマ、と来ると一般的に思い出すのがあの涙腺刺激高視聴率TVドラマ、「北の国から」ではないでしょうか。
しかしながら私は、このお化けドラマをオンタイムに一話も観た事がないという稀有な人。
おまけについ何年か前の、特番みたいな連日放送で初めて鑑賞、正直皆さんが何故にソコまでハマって感動するのか終いまで解らなかった人間です。
グランプリ受賞作品なら、と下調べもせず試写に参加、上映冒頭の司会進行で初めて「ばんえい競馬」の話と聞き、馬には何のうらみはないけれど、正直がっかりしたのです。
走る馬も、雪景色も大好きだけど「競馬=バクチ」「寒い雪国=生活が大変」的な展開は苦手なんです、私。
上映開始直後はそんな色眼鏡で見始め、案の定東京から“落ち武者”してきた学(伊勢谷友介さん)はタクシーの中で携帯電話の電波が届いていない事を確認(落ち込み?)、降り積もる雪の中に投げ捨てます。
「負け犬→家族愛→立ち直り」の展開ね、と内心ちょっとガッカリしながら見ていました。
学は帯広のばんえい競馬レース場に向かいます。そこで有り金を全部スってしまいます。
(ここで流れるレースの光景にはある種のパワーは感じました)
“お決まり”のコースで、だらだらと兄・威夫(佐藤浩市)の営む矢崎厩舎に転がり込む。
自らが社長としてかつてはこの田舎の厩舎を毛嫌いし、鼻息も荒く東京での派手な流行の商売をしていたのに、大コケし破産寸前の逃亡状態でしかも、実家が裕福な妻とも離婚した事は隠して、の13年ぶりの帰郷。
ここからどう感動させてくれるのか、と思っていた矢先・・・・。
過去の経緯から突然の帰郷にいぶかしげにしながらも、厩舎にいるなら朝の手伝いをしろ、と学はたたき起こされ、朝の作業にかり出される。
その馬達の“朝練”の光景。
早朝の外はかなり寒いだろうな、と雪の風景から察しはついていたものの、想像を絶する気温なのだろう、馬の体から馬の曳くそりの上に立つ人の身体から、陽炎の、いやまるで蒸気機関車の煙の如く昇り立つ熱気、湯気。
それが何頭も、何頭も、ただひたすらに歩みを進める。
朝もまだ明けぬ北の大地に鞭打つ音と、馬と調教師の息と掛け声だけがこだまする光景は、ただ力強く迫力があるだけではなく、ある種神秘的で、生きている様をまざまざと見せられてしまった様な、なんともいえない衝撃を味あわせてくれます。
そこからは、あっという間に映画に引き込まれ、ただひたすらに見入ってしまいました。
厩舎にいる人たちは皆、「いい人」と書くのでは薄っぺらくて好きではないのですが、悪人はいない。
代えて書くならば、「普通にこの場を自分なりに一生懸命生きている(落ち度はあるけど)」人達です。ただ一人、中途半端な学がここで徐々に変わっていきます。
今まで言い訳がましく「俺だって必死だった」と自己弁護し続け自分しか見なかった人間が、周りを視られる人間になっていく。それはきっと、学だけではないのです。
騎手の牧恵(吹石一恵ちゃん)だって、賄いの春子だって(小泉今日子さん)、観ている観客だって。
女優だから俳優だからと小奇麗に化粧したり洋服着せたりしていない演出も好感が持てました。
あえて言うなら、牧恵の自家用車は雪国を走っているには綺麗に手入れが行き届きすぎていたくらいか・・・(スミマセン細かくて)。
人生は「山あり谷あり」。平地で、何でもない処でも先に進めなくて足掻くこともある。
まるで「ばんえい競馬」そのものだ。
勝たないと馬刺し。
と、周りの人間に揶揄されている勝てない馬・ウンリュウの瞳にはあきらめの色は微塵もない。
もともと馬の瞳は綺麗で可愛らしく、利口でキチンと人を見分けるらしい。
出来るならもっともっとウンリュウの顔を見て居たかった、ウンリュウに励まされた、そんな感想です。
いや~、「キャシャーン」でしたっけ?伊勢谷さんが出てたスタイリッシュ映画。
まず、“あの”時の印象や演技は忘れてください、観始め同じ人とは気づかなかったです。
「雪に願うこと」公式HP
http://www.yukinega.com/index.html
「雪に願うこと@映画生活」
http://www.eigaseikatu.com/title/15265/
“東京”と冠についてはいますけど、賞金は10万ドル(円じゃないのね)。
監督さん、換金の時期計った方がいいですよね(笑)
・・・と、ちょっと色眼鏡な書き出しでしたが、正直受賞しなかったら作品名も知らなかったことでしょう。
役者は粒ぞろいの演技派+舞台は雪の北海道=ヒューマンドラマ、と来ると一般的に思い出すのがあの涙腺刺激高視聴率TVドラマ、「北の国から」ではないでしょうか。
しかしながら私は、このお化けドラマをオンタイムに一話も観た事がないという稀有な人。
おまけについ何年か前の、特番みたいな連日放送で初めて鑑賞、正直皆さんが何故にソコまでハマって感動するのか終いまで解らなかった人間です。
グランプリ受賞作品なら、と下調べもせず試写に参加、上映冒頭の司会進行で初めて「ばんえい競馬」の話と聞き、馬には何のうらみはないけれど、正直がっかりしたのです。
走る馬も、雪景色も大好きだけど「競馬=バクチ」「寒い雪国=生活が大変」的な展開は苦手なんです、私。
上映開始直後はそんな色眼鏡で見始め、案の定東京から“落ち武者”してきた学(伊勢谷友介さん)はタクシーの中で携帯電話の電波が届いていない事を確認(落ち込み?)、降り積もる雪の中に投げ捨てます。
「負け犬→家族愛→立ち直り」の展開ね、と内心ちょっとガッカリしながら見ていました。
学は帯広のばんえい競馬レース場に向かいます。そこで有り金を全部スってしまいます。
(ここで流れるレースの光景にはある種のパワーは感じました)
“お決まり”のコースで、だらだらと兄・威夫(佐藤浩市)の営む矢崎厩舎に転がり込む。
自らが社長としてかつてはこの田舎の厩舎を毛嫌いし、鼻息も荒く東京での派手な流行の商売をしていたのに、大コケし破産寸前の逃亡状態でしかも、実家が裕福な妻とも離婚した事は隠して、の13年ぶりの帰郷。
ここからどう感動させてくれるのか、と思っていた矢先・・・・。
過去の経緯から突然の帰郷にいぶかしげにしながらも、厩舎にいるなら朝の手伝いをしろ、と学はたたき起こされ、朝の作業にかり出される。
その馬達の“朝練”の光景。
早朝の外はかなり寒いだろうな、と雪の風景から察しはついていたものの、想像を絶する気温なのだろう、馬の体から馬の曳くそりの上に立つ人の身体から、陽炎の、いやまるで蒸気機関車の煙の如く昇り立つ熱気、湯気。
それが何頭も、何頭も、ただひたすらに歩みを進める。
朝もまだ明けぬ北の大地に鞭打つ音と、馬と調教師の息と掛け声だけがこだまする光景は、ただ力強く迫力があるだけではなく、ある種神秘的で、生きている様をまざまざと見せられてしまった様な、なんともいえない衝撃を味あわせてくれます。
そこからは、あっという間に映画に引き込まれ、ただひたすらに見入ってしまいました。
厩舎にいる人たちは皆、「いい人」と書くのでは薄っぺらくて好きではないのですが、悪人はいない。
代えて書くならば、「普通にこの場を自分なりに一生懸命生きている(落ち度はあるけど)」人達です。ただ一人、中途半端な学がここで徐々に変わっていきます。
今まで言い訳がましく「俺だって必死だった」と自己弁護し続け自分しか見なかった人間が、周りを視られる人間になっていく。それはきっと、学だけではないのです。
騎手の牧恵(吹石一恵ちゃん)だって、賄いの春子だって(小泉今日子さん)、観ている観客だって。
女優だから俳優だからと小奇麗に化粧したり洋服着せたりしていない演出も好感が持てました。
あえて言うなら、牧恵の自家用車は雪国を走っているには綺麗に手入れが行き届きすぎていたくらいか・・・(スミマセン細かくて)。
人生は「山あり谷あり」。平地で、何でもない処でも先に進めなくて足掻くこともある。
まるで「ばんえい競馬」そのものだ。
勝たないと馬刺し。
と、周りの人間に揶揄されている勝てない馬・ウンリュウの瞳にはあきらめの色は微塵もない。
もともと馬の瞳は綺麗で可愛らしく、利口でキチンと人を見分けるらしい。
出来るならもっともっとウンリュウの顔を見て居たかった、ウンリュウに励まされた、そんな感想です。
いや~、「キャシャーン」でしたっけ?伊勢谷さんが出てたスタイリッシュ映画。
まず、“あの”時の印象や演技は忘れてください、観始め同じ人とは気づかなかったです。
「雪に願うこと」公式HP
http://www.yukinega.com/index.html
「雪に願うこと@映画生活」
http://www.eigaseikatu.com/title/15265/
by bijomaru0330am | 2006-05-11 23:45 | 試写会