「花のあと」を観る
2010年 02月 28日
藤沢周平の庄内地方、海坂藩(うなさかはん)シリーズ「花のあと」を観てきました。
原作は知らねど、いくつかの藤沢作品を鑑賞済みの私、「主人公の以登(いと)が北川(景子)ちゃん!?」とちょっと心配(失敬)しておりました。しかしながらその‘心配の種’は見事に芽吹き‘心配要らずの花’となって開花致しておりました。
久しぶりの試写会は、藤沢周平氏の実娘・遠藤展子氏、主演の北川景子ちゃん、脚本の長谷川康夫氏のトークショウ付き。いわゆるアイドルのキャピキャピ(死語)宣伝トークではなく、じっくり聞かせる鑑賞前にかなりの参考になる話でした。
が・・・。まま、この部分の「無駄話」はまた別途。
↓ここからネタばれあり。
脚本の長谷川氏曰く「20数ページの小作を膨らますのは難しくはなかった」らしい・・・。
以登(北川ちゃん)は、藩の要職を務める重鎮、寺井家五百石の独り娘。桜満開の二の丸で、嫁ぎ先に思案する友は、以登に「(剣の)腕のあるおなごは、殿方が寄り付かぬ。」とうそぶく。普段おなごの立ち入れない二の丸は、花見のその時だけ女人のそれが許され、格好の‘見初め場’となっていたからだ。まぁ以登にはすでに許婚があったのだが。その以登に声を掛けてきた旗本がいた。
この始めのシーン、たいそう綺麗であと一ヶ月もしないでやってくる花見の時期を焦がれさせます。
しかもナレーションに「恋の話、恋といっても‘嬉しい甘し’のみならず、‘苦し辛し’恋もございます。」と満開の桜に被せてくるのだから、恋のしんどさを知っている者ならば、ぎゅっと胸が詰まって一気に心が捕まれてしまいます(はい。)。
剣の達人であった以登の父(國村隼)は男児を望むも、生まれたのはこの以登であった。しかし、この以登に父はしっかりと剣と武家たる心を仕込んでいたのである。
その辺の道場では以登に敵うものはなく、二の丸で声を掛けてきた旗本は、藩内随一の剣の腕を持つといわれる江口孫四郎(宮尾俊太郎)だった。
ただただ‘剣士同士’としての挨拶をしに。
この作品のもう一つの不安材料だったのは、バレリーナの宮尾さん(「アナザー・スカイ」のイメージがぁ)が、草刈民代さんばりに俳優として開花するのか!・・・ってこと。
恐る恐る演技を見ていましたが、ふむ、そう悪くもない。元々寡黙で真面目で剣一筋、ってとこが孫四郎の役どころなので、ボロがでない(失敬)というか、宮尾さんに合っているっていうか。
以登と孫四郎は、‘剣士同士’として手合わせをする・・・のだが、これも仲々ヨカッタです。バレエダンサーの方って基本的な筋肉が美しいから、胴衣を着ていても背筋もすぅっと伸びて所作も美しい。得です(じゃない、鍛錬の賜物ですな)。
背も高くて裃も似合うし、醤油顔(死語)だから髷が似合うし。
おなごの以登の剣を、侮る事無く真摯に(そして紳士に・・・是非鑑賞して)剣を交える孫四郎。その姿勢に心打たれる以登。
以登が恋をした瞬間でした。きっと孫四郎もそうなんだろーなー。
でも、身分(孫四郎は下級旗本の三男)が違うし、以登には許婚がいるし。
そのうち孫四郎も婿に入る事が決まるのです。うー。。。「釣り合わぬはなんとやら」、と申しますが、こういうのツラいですよね~~。。。。
しかも、以登と孫四郎がまともに時間を共有したのは、この「手合わせ」だけ!
寅さんは「愛さえあれないいじゃない」と言いました。恋を成就させなくても、誰かを愛してしることこそが大事。、、、そーだけど~!、、判るけど・・・痛いほど。
そのうち孫四郎は入り婿先の御家の不徳がらみの上に、藩の重鎮の嫉みがらみの罠に嵌り切腹しなければならなくなる。以登は事の真実を知り剣を取る。
(北川ちゃんの頑張りは是非劇場で)
武家の娘さんが、あだ討ち紛い(って、あだ討ちなんですが)の所業に至るのはどうなの?と思っていたのですが、あれほど腕に覚えがあれば、私も打ちたい敵(笑)。
それに許婚の片桐才助(甲本雅裕)がいい。以登が事の真相を知る手助けをしてくれるんですよ。ハンサムじゃないし、剣の腕もないが頭がいいんでしょうね。
孫四郎とは違った意味や部分で格好良かった。以登を守っている、大事に思っているっている感じがじわっとでてて、男二人の対比がいいかんじでした。
この時代のしきたりを重んじ、藩の中で生きていく為(藩主の為にも)に、自分が成すべき事は何か、立場は何か、「恋だ、惚れた、」だの前にそういった成すべき事に重きを置き、その上で自分の気持ちを大事にしつつ己を律するその姿に、哀れさは微塵も感じず、むしろ見習うべき姿に痛く感じました。
現代はなんでも自由で(特に若い時は)いろいろ謳歌できるけど、何も制約のないその気ままさに、自らを見失う様な事が無いように、自分の一番根底にある「覆せない大事なもの」を信条に、今更ながら自分を省みて律せねば、と思う春の夜でした。
「花のあと」@ぴあ映画生活
原作は知らねど、いくつかの藤沢作品を鑑賞済みの私、「主人公の以登(いと)が北川(景子)ちゃん!?」とちょっと心配(失敬)しておりました。しかしながらその‘心配の種’は見事に芽吹き‘心配要らずの花’となって開花致しておりました。
久しぶりの試写会は、藤沢周平氏の実娘・遠藤展子氏、主演の北川景子ちゃん、脚本の長谷川康夫氏のトークショウ付き。いわゆるアイドルのキャピキャピ(死語)宣伝トークではなく、じっくり聞かせる鑑賞前にかなりの参考になる話でした。
が・・・。まま、この部分の「無駄話」はまた別途。
↓ここからネタばれあり。
脚本の長谷川氏曰く「20数ページの小作を膨らますのは難しくはなかった」らしい・・・。
以登(北川ちゃん)は、藩の要職を務める重鎮、寺井家五百石の独り娘。桜満開の二の丸で、嫁ぎ先に思案する友は、以登に「(剣の)腕のあるおなごは、殿方が寄り付かぬ。」とうそぶく。普段おなごの立ち入れない二の丸は、花見のその時だけ女人のそれが許され、格好の‘見初め場’となっていたからだ。まぁ以登にはすでに許婚があったのだが。その以登に声を掛けてきた旗本がいた。
この始めのシーン、たいそう綺麗であと一ヶ月もしないでやってくる花見の時期を焦がれさせます。
しかもナレーションに「恋の話、恋といっても‘嬉しい甘し’のみならず、‘苦し辛し’恋もございます。」と満開の桜に被せてくるのだから、恋のしんどさを知っている者ならば、ぎゅっと胸が詰まって一気に心が捕まれてしまいます(はい。)。
剣の達人であった以登の父(國村隼)は男児を望むも、生まれたのはこの以登であった。しかし、この以登に父はしっかりと剣と武家たる心を仕込んでいたのである。
その辺の道場では以登に敵うものはなく、二の丸で声を掛けてきた旗本は、藩内随一の剣の腕を持つといわれる江口孫四郎(宮尾俊太郎)だった。
ただただ‘剣士同士’としての挨拶をしに。
この作品のもう一つの不安材料だったのは、バレリーナの宮尾さん(「アナザー・スカイ」のイメージがぁ)が、草刈民代さんばりに俳優として開花するのか!・・・ってこと。
恐る恐る演技を見ていましたが、ふむ、そう悪くもない。元々寡黙で真面目で剣一筋、ってとこが孫四郎の役どころなので、ボロがでない(失敬)というか、宮尾さんに合っているっていうか。
以登と孫四郎は、‘剣士同士’として手合わせをする・・・のだが、これも仲々ヨカッタです。バレエダンサーの方って基本的な筋肉が美しいから、胴衣を着ていても背筋もすぅっと伸びて所作も美しい。得です(じゃない、鍛錬の賜物ですな)。
背も高くて裃も似合うし、醤油顔(死語)だから髷が似合うし。
おなごの以登の剣を、侮る事無く真摯に(そして紳士に・・・是非鑑賞して)剣を交える孫四郎。その姿勢に心打たれる以登。
以登が恋をした瞬間でした。きっと孫四郎もそうなんだろーなー。
でも、身分(孫四郎は下級旗本の三男)が違うし、以登には許婚がいるし。
そのうち孫四郎も婿に入る事が決まるのです。うー。。。「釣り合わぬはなんとやら」、と申しますが、こういうのツラいですよね~~。。。。
しかも、以登と孫四郎がまともに時間を共有したのは、この「手合わせ」だけ!
寅さんは「愛さえあれないいじゃない」と言いました。恋を成就させなくても、誰かを愛してしることこそが大事。、、、そーだけど~!、、判るけど・・・痛いほど。
そのうち孫四郎は入り婿先の御家の不徳がらみの上に、藩の重鎮の嫉みがらみの罠に嵌り切腹しなければならなくなる。以登は事の真実を知り剣を取る。
(北川ちゃんの頑張りは是非劇場で)
武家の娘さんが、あだ討ち紛い(って、あだ討ちなんですが)の所業に至るのはどうなの?と思っていたのですが、あれほど腕に覚えがあれば、私も打ちたい敵(笑)。
それに許婚の片桐才助(甲本雅裕)がいい。以登が事の真相を知る手助けをしてくれるんですよ。ハンサムじゃないし、剣の腕もないが頭がいいんでしょうね。
孫四郎とは違った意味や部分で格好良かった。以登を守っている、大事に思っているっている感じがじわっとでてて、男二人の対比がいいかんじでした。
この時代のしきたりを重んじ、藩の中で生きていく為(藩主の為にも)に、自分が成すべき事は何か、立場は何か、「恋だ、惚れた、」だの前にそういった成すべき事に重きを置き、その上で自分の気持ちを大事にしつつ己を律するその姿に、哀れさは微塵も感じず、むしろ見習うべき姿に痛く感じました。
現代はなんでも自由で(特に若い時は)いろいろ謳歌できるけど、何も制約のないその気ままさに、自らを見失う様な事が無いように、自分の一番根底にある「覆せない大事なもの」を信条に、今更ながら自分を省みて律せねば、と思う春の夜でした。
「花のあと」@ぴあ映画生活
by bijomaru0330am | 2010-02-28 23:45 | 試写会